ビル, 駅, 店, 公園, 道, 橋, 電柱, 家, 部屋, 風呂, トイレ, 壁, 床, 電灯, ドア, 窓, ベッド, クーラー, 冷蔵庫, テレビ, ピアノ, 机, 本棚, 箪笥, 袖斗, パソコン, コーヒーメーカ, 固定電話, ....
電車, バス, 車, スクーター, 自転車, キックボード, ギター, ノートPC, PDA, 携帯電話, ウォークマン, 腕時計, ノート, 文房具, 服, 靴, ペン, ...こうして見ると、 モバイルだのユビキタスだのと最近盛んに言われている割には、 実世界中で計算機が直接関連しているものはまだまだ少ないようです。 近い将来、あらゆるところで あらゆるものがで計算能力やネット接続を利用できるように なると考えられるのに対し、 そのような研究開発がなされているのはごく一部であるといえそうです。 まだ計算機化/ネットワーク化されていないものに対して 計算機やネットワークが使えるようにすれば 新しい製品やサービスを提案できるでしょう。
「インターネットビルディング」は最近流行っていそうですし、
「インターネットステーション」なんてのはJRが喜びそうです。
「インターネットショップ」はちょっと意味が違うかもしれませんが
「インターネットロード」はITS(Intelligent Transportation System)がらみの響きがして良さそうです。
「インターネットブリッジ」も意味が多少違いそうですが
「インターネット電柱」があれば街角の情報収集に役立ちそうですし、
「インターネットハウス」など、意味は怪しげながらもなんとなく楽しそうに聞こえます。
「インターネットルーム」
「インターネット風呂」
「インターネットランプ」
移動系に目を向けても、
「インターネット自動車」など、なかなか楽しそうなものがいろいろ考えられます。
「インターネットギター」
「インターネット靴」
「ビルと家をネットで結ぶ」無闇につないでも駄目かもしれません。しかし、
「駅と電柱をネットで結ぶ」
「橋とトイレをネットで結ぶ」
...
「床とドアをネットで結ぶ」ことにより自動ドアができますし、
「時計とテレビをネットで結ぶ」ことによりビデオ予約がでるでしょう。
「電柱とPDAをネットで結ぶ」ことにより地域情報を簡単に取得できるかもしれません。
もう少しひねってみると、
「ギターとPDAをネットで結ぶ」ことによりPDAでギター演奏ができますし、
「コーヒーメーカと部屋をネットで結ぶ」ことにより、 コーヒーにつられた人々を談話室に集めることもできるでしょう。 その他、可能性はたくさん考えられそうです。
このような、一風変わった組み合わせについて、 実際にいろいろな研究が行なわれています。 モバイルコンピューティングの研究を行なっている 阪大の塚本昌彦助教授は WonderSwanの開発キットであるWonderWitchや PocketPCを使って色々なモバイル楽器演奏システムを作っていますし、 実世界指向インタフェースの研究を行なっている 玉川大学の椎尾一郎助教授は コーヒーの香りで人々を談話室に呼び寄せるという 「Meeting Pot」というシステムを作っています。 Meeting Potでは、 離れた談話室のコーヒーメーカの状態をセンサで検出し、 コーヒーができている場合は 香りを居室に流すという凝った工夫が行なわれています。
小さなものに計算機を組み込もうとする場合は、 現在のパソコンで使われているような複雑なCPUではなく、 20年前の「マイコン」時代に使われていたような 比較的シンプルなCPUがよく使われています。 このようなCPUの中で最も広く使われているのが Microchip社のPICというCPUです。 PICは8ビットの安価なマイクロプロセッサですが、 昔の8080やZ80などよりもはるかに高速に動作しますし、 入出力ポート, A/Dコンバータ, シリアル通信などの 機能を内蔵しているものもあり、 組込みシステムを作るときの定番CPUになっています。 PICのキットや開発ソフトは 秋葉原の秋月電子や大阪日本橋の共立電子で販売されています。
PICにはキットや各種のソフトウェア開発ツールが揃っており、 比較的手軽に使えるととはいうものの、 やはり普通の人々にとっては 回路を作ったりアセンブラでプログラミングしたりするのは大変なので、 敷居が高く、誰もが気楽に使うようなものではありませんでした。 ところが最近 (株)トライステートから 「PICNIC」というボードが発売され、 状況が変わってきました。 PICNICは、 A/Dコンバータやシリアル通信回路を内蔵した PIC16F877チップとその周辺回路に加え、 Ethernetを制御するNIC(Network Interface Controller)が 実装されており、 TCP/IPがサポートされています。 PICNICボードには、 Ethernetポートに加え、 シリアルポート、アナログ入力ポート、デジタル入出力ポート、 温度センサが接続されており、これらを ネットワーク経由で制御することができます。 細かい制御を行なうためには UDPを使ったプログラミングが必要ですが、 簡単なHTTPサーバやCGIが動作するので、 スイッチを単純にOn/Offしたり温度を調べたりする程度ならば、 ブラウザなどから簡単に制御することができます。 各種のセンサやスイッチをPICNICのA/Dコンバータや入出力ポートに接続すれば、 家庭のLANに接続するだけで、ブラウザなどからいろいろな制御を 行なうことができます。
ブラウザからPICNICを見たところ。
「H」「L」のボタンを押すとPICの出力ポートが変化し、
PICNICボードのLEDが点滅する。
現在の温度もブラウザで確認できる。
車やスクーターにセンサや携帯電話を積んでおいても なにかと便利なことがあるでしょう。 盗まれたりレッカー移動されたりした場合でも どこにあるかすぐわかりますし、 モバイルなセンシングマシンとして使うこともできます。 たとえば、スクータにセンサや電話を積んで駐車しておけば、 人出や交通量を遠隔地から計測することができます。
現在の社会生活は ユビキタスには計算機もセンサも存在しないという前提で 作られていますから、 このような世界はかなり奇異ですし、プライバシなどの心配もあるでしょう。 しかしユビキタスなセンサが無かったからこそ泥棒の心配があったり、 人に連絡がつかずに困ったりすることが多かったわけですから 総合的には悪いことではないだろうと楽観しています。 上にあげたような例は、 最初は単に面白いだけというものが多いでしょうが、 何でもネットワークにつなげられるようになれば、 新しい面白い応用が沢山考えられてくるでしょう。 モバイルとかユビキタスとか言っても、今のところは 携帯電話やパソコンをネットワークにつなぐ話が主流ですが、 計算機と直接関係のなさそうなものを 誰もが簡単にネットワークにつなげられるようになったとき、 本当に面白い世界がひろがってくるように思われます。
計算機科学者は 長年FTPやtelnetを使っていましたが、 Webは計算機コミュニティではない場所で 最初に発展しました。 計算機科学者は 長年プログラミング言語の研究を行なっていましたが、 スプレッドシートは計算機コミュニティではない場所で 発明されました。 エンジニアや計算機科学者ではない人々が 実世界のいろいろなものをネットワークで結びはじめた頃、 本当に有用な実世界インターフェースシステムが出現 してくるのかもしれません。
クーラー、電話、ノート...ちょっと三題話の修業が要りそうです...
ピアノ、腕時計、ドア
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