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いろいろなプレゼンテーションに計算機を利用することは現在あたりまえになっていますが、 議論などのために計算機やインターネットを使うことは非常に便利で、 今後このような型式は増えてくるでしょう。 将来は普通の宴会でも計算機やインターネットが 使われるようになるかもしれません。
今年は、原田康徳氏らによる 「Viscuit : 柔軟な動作をするビジュアル言語」 という論文がベストペーパー賞を受賞しました。 Viscuit[*3]は、 プログラミングの素人や子供でも簡単に 図を使って視覚的にプログラミングを行なうことができるシステムです。 Viscuitでは図の書き換え規則でプログラムを表現します。 書き換え操作を適用する前の図と適用後の図の組みあわせを定義することにより、 その規則に従って図がどんどん書き換えられていきます。 例えば図1のような書き換え規則をユーザが定義して 図2に対して適用すると、 スキーヤが旗をまわりながら移動するアニメーションが得られます。
図1: Viscuitの規則の例
図2: 旗を回りながら滑降
書き換え規則によりアニメーションやプログラムを作るシステムは Stagecast[*4]や AgentSheets[*5]のようなシステムが これまでいくつか提案されていますが、 図の配置の柔軟性が充分でないため、 なめらかな動きをするアニメーションを作るのは困難でした。 Viscuitでは柔軟なマッチング手法を採用しているため、 簡単に規則を書いてアニメーションを作ることができます。 デモセッションでは、 Viscuitを利用して作成された動く絵本がデモされていました。 Viscuitは、NTT InterCommunicationCenter(ICC)の 「記録と表現」展のワークショップ[*6]で展示され、 子供など多くの参加者に好評だったようです。
投票の結果によると、以下のような論文が人気があったようです。
音声スポッタ: 人間同士の会話中に音声認識が利用できる新たな音声インタフェース |
近傍関係にもとづく情報検索システム |
高次元の利用による対話的グラフ配置法 |
Lumisight Table: 天地問題を解消した対面協調支援システム |
ウェアラブル環境のためのルールベースBGMプレーヤについて |
自分自身との対戦:生体信号を利用したゲーム |
「音声スポッタ」というのは、産業技術総合研究所の後藤真孝氏らによる 「非言語情報を活用した音声インタフェース」の研究[*7]の一貫で、 会話中の言いよどみと音高の変化を利用することにより、 精度の高い音声認識を行なわせるというシステムです。 近傍検索システム[*8]は私のグループで開発した情報検索システムで、 計算機中のファイルやメール各種の「近傍関係」をリンクとしてブラウザに表示することにより、 似た内容/似た時刻/似た場所/などをたどりながら 情報検索を行なうことができるというものです。
ToolDeviceは昨年12月号の「続々: 天才プログラマを発掘せよ!」でも紹介しましたが、 今回はモータやソレノイドのようなアクチュエータを使って フィードバックを与えつつ情報をコピーしたりペーストしたりできる スポイトの型装置などがデモされ、人気を呼んでいました。
スポイト型デバイス
Lumisight Tableは 複数のユーザが周囲にすわって協調作業を行なうことができる机型の表示/入力装置です。 水平に置いたひとつのディスプレイのまわりにユーザがすわって協調作業をしようとすると、 表示の向きと反対側にいる人は文字の向きが逆になって画面を読み辛いという問題がありますし、 それぞれのユーザが別々のディスプレイを使うと強調作業がやりにくいという問題があります。 Lunisight Tableでは、 方向によって透明度が変化する Lumisty[*9]というシートと複数のプロジェクタを使用することにより、 机のまわりのユーザごとに異なる表示が見えるようにしたものです。 ひとつの地図を見ながら複数ユーザが協調作業をするような場合、 皆が同じ地図を見ているのに文字はそれぞれのユーザの方向を向いているというような 表示を行なうことができます。
Lumisight Table
その他、投票によると以下のようなシステムが人気があったようです。
Visual Haptics: カーソルを用いた手触り提示システム |
キーワードを渡り歩くブラウザの提案 |
自分自身との対戦:生体信号を利用したゲーム |
今回は、 「くまうた 〜くまと演歌と日本の心〜」 というタイトルで、 産総研の江渡浩一郎氏による「招待講演」がありました。 「くまうた」というのは2003年11月に発売されたPlayStation2のゲームで、 宇宙から来た「くま」に演歌の心を教えることにより得点を竸うという謎の多いゲームです。 江渡氏は演歌の自動作曲部を担当したということですが、 「くまうた」はなかなか奥が深いゲームで、 単語登録機能も持っているため、 参加者の幾人かは、くまに変な歌を歌わせようと夜遅くまでまで苦労していたようです。 「くまうた」は現在販売されていますから 正確には「お蔵入り」ではないわけですが、 開発してから何故か3年もお蔵入りしていたということで、 今回招待講演されることになりました。 この他、 「親と子供がオムツを通じて感覚を共有するシステム」など 謎のシステムが沢山紹介されてOUISSを盛り上げていました。