POBox(Predictive Operation Based On eXample)は、 予測インタフェースの手法を応用した高速テキスト入力手法です。 POBoxはもともとペン型計算機の文章入力を高速化するために開発されましたが、 現在は携帯電話/フルキーボードをもつ機器/ウェアラブル計算機用など あらゆる機器で使用可能にななっています。

POBoxは、 単語の検索手法と予測手法の工夫により、 テキスト入力の手間を大きく減らす工夫をしたシステムです。
現在一般的な文章入力システムでは ユーザが全ての情報をシステムに与えることが前堤になっています。 例えば手書き文字認識システムではユーザが単語の正しい綴りと 正しい文字を与えなければなりませんし、 かな漢字変換システムではユーザが単語の完全な読みを与えなければ ならないのが普通です。 ペン型計算機などの携帯端末では、 読みなどの情報を計算機に伝えることがキーボードに比べ時間がかるため、 従来の手法で高速に文章を入力することが困難でした。
しかし実際は、入力する単語を選ぶ場合、それに関する完全な情報を 与えなくてもよい場合がほとんどです。 例えば、「入力」という単語をシステムに入力しようとする場合、 「にゅうりょく」という完全な読みを指定しなくても、 「にゅう」だけ指定してそれにマッチする単語の侯補を検索して 頻度順に表示させれば、 その中から「入力」を選ぶことは簡単にできると考えられます。 この場合、「入力」を入力するのに4ステップですみますが、 普通のかな漢字変換では8ステップが必要となることになります。
また、POBoxは例文辞書を持っており、 直前に入力された単語から次に入力される単語を予測します。 例えば「入力」の後には「する」「した」などの単語が続くことが多いため、 これらの単語は自動的に侯補として表示され選択可能となります。

• 各種の計算機において 文章を効率よく入力することができるようになります。
  たとえば、 ペン型計算機で文章を入力するには 文字認識またはソフトキーボードを用いたかな漢字変換がよく使われていますが、 どちらの場合にも入力にはかなりの手間が必要であり、 日本語の場合入力速度は30文字/分程度が限界であると考えられています。 POBoxを使うと、 ペン型計算機でも 従来手法の倍以上の速度(60文字/分)で日本語文章を入力することが可能になります。
• 自動曖昧検索を行なうので、読みを正確に指定する必要がありません。 たとえば「dsg」と入力して「design」を候補として得ることができます。 このためスペリングエラーを減らすことができます。
• 老人、障害者、初心者などでも効率的に文章を入力することができますし、 電車の中や歩きながらでも文章を入力することができます。
• ペン計算機、携帯電話、ウェアラブルコンピュータ、フルキーボードをもつPC など、あらゆる計算機で使うことができるので、 すべての計算機で同じ辞書を共有することができます。 メモリースティックの辞書を持ち歩いて使えば、 PCで登録した固有名詞を携帯電話で使うこともできるでしょう。 将来的には、インターネット上の辞書サーバを利用することにより どの端末でも同じように変換を行なうことも可能になるでしょう。
• 一度選択した単語は次回からは候補の先頭に表示されるようになります。 このような辞書の学習機能のため、使いこむほど簡単に文書を入力できるよう になります。

UNIX版、Winows版は 日本語入力の例、 英語入力の例、 あいまい検索の例を御覧下さい。 Pilot版は Pilot版POBoxのページを御覧下さい。

POBoxは PalmPilot, WindowsCE, UNIX (X Windows), Windows95, CdmaOne電話, Java, Newton, Emacs (Mule) など各種の機器/システムで動作しています。 PalmPilot版が今のところ最も安定しており、 ダウンロードして使ってみることができます。 またPalmをお持ちでない場合は Windows95/NT4.0版をお試し下さい。 Emacs版も近日中に公開予定です。
またcdmaOne携帯電話に移植したものを貸し出すことも可能です。

単語を絞り込むためには読みを入力するのが最も効果的です。 よく使う単語の場合は 最初の1文字だけ指定すればその単語が候補として出現するので 候補列から選ぶことにより入力できますが、 使用頻度が極端に小さな単語を入力する場合は 読みをすべて入力してから候補をさがすようにした方が効果的です。

増井は最近は何ヶ月もPOBoxだけしか使わずに文章を書いています。