ユビキタスの街角

Monday, June 26, 2006

いまここにある危機

中2の子供が近所の漁港に最近よく釣りに行くので、どんなものか見に行ってみた。 漁港の岸壁は適度に人気があるようで、数組の家族が釣りを楽しんでいた。 人々がいる岸壁は水面から4mぐらいの高さなのだが、柵が無いのでどうもあぶなっかしい。 幼稚園ぐらいの子供が岸壁の端をウロウロしているのは危険に見えるのだが、 誰も気にしていないようだし、そんなものかと思ってボーっと子供の釣りを眺めていた。

すると突然背後でボチャンと大きな音がした。 その方向にいた中年男性があわてて周囲を見渡し、自分の子供が落ちたことに気付くやいなや、 服を着たまま海に飛びこんだ。 この父親は、落ちた子供をかかえあげることにすぐ成功したため、とりあえず安心したのだが、 周囲につかまる場所がないのでだんだん苦しそうな顔になってきた。 岸壁周辺にはロープも棒も無かったので助けをさしのべることができないし、 私以外は子供がほとんどだったのでオロオロするばかりである。 いよいよヤバくなった場合は私も飛び込んで助けなければとは思ったが、 4m下の海面に飛び込んで二人を助けるほど泳ぎが得意なわけではないから、 下手をすると自分の命が危くなってしまう。 そうこう考えているうちに父親は本格的に苦しくなってきたように見えた。

幸いなことに近くにダイビングスクールの船がおり、 私が茫然としていた間に騒ぎに気付いて急拠助けにきてくれた。 ウェットスーツのダイバーが数人飛び込み、 二人を支えたり浮きを投げ入れたりした結果、 すぐに全員無事に船上に救助されたのだが、 父親は船に這いあがる力も全く残っておらず、 もう少し救助が遅ければ危なかったようであった。

とりあえず無事におさまったのではあるが、私にとっては衝撃的な出来事であった。 すぐに海に飛び込んだところを見ると、この父親は泳ぎに自信があったのだろうが、 着衣のまま飛び込んだのは迂闊だっただろう。 そもそも小さな子供を危険な場所で放っておいたのも迂闊なのだが、 それ以外にもいろいろ考えさせられてしまった。

  • 普通の場所でいとも簡単に命にかかわる事故が起こりうること
  • それに対して助けを出すことができない自分が情けないこと
  • 事故は充分予想できることなのに誰も備えをしていないこと
  • そのような危険を目にした後も、何事もなかったかのように誰もが釣りを続行したこと
  • 普段はザイルやナイフなどを持ち歩いているのに、肝心なときに持っていなかったこと
危険はどこにでもあるとはいえ、 容易に予測できる危険に対して何の対策も行なわないのは愚の骨頂である。 明らかな危険が迫っていても逃げ遅れる人間が多いというが、 普段からいろいろ準備をしたり判断力を磨いたりしなければならないと痛切に感じてしまった。

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